この推理小説には「扉」が二つある!
電車に乗っている時間は暇なので、出ている広告の作品はホイホイ購入してしまうこの頃。ライトな小説や評論・ビジネス書ならば電子書籍で構わないと思ってしまっているので、その場でパパッと注文して読み始めてしまうのですが……先日壮々たる受賞歴と共に紹介されているミステリがあったので、即断で購入。移動の合間合間に読んでいたのですが、ようやく読了しました。
「でも、これは推理小説だとして考えると珍しいケースかもしれませんね。なにせ、真相に辿り着くことのできる論理が二通りあったわけですから。」
推理小説家・香月史郎は霊媒として死者の声を受け取ることができる少女・城塚翡翠と出会う。過去、事件解決に協力した経緯から警察に捜査協力を行なっている香月は翡翠の力を使って数々の事件を解決していく。数々の事件解決を経て香月は翡翠の力を本物の霊能力と確信するが……。
霊媒としての翡翠の能力には制限があり、共に行動する香月がその法則性を見つけて事件を解決に導いていく。翡翠がみた霊視がなにを示しているのかを読み解くのもひとつの醍醐味として描かれている。
また、冒頭に触れられる連続殺人事件の解決に向けて、各章に挟まれるインターバルも読み解き甲斐のある部分だと感じた。
ここまでがこの物語のA面までの感想。わたしはひとつの分かりやすい扉を見つけて抜けることはできたけれど、もうひとつの扉を抜けてB面にたどり着くことはできませんでした。
表現が本当に精緻な作品なので、最後まで通読してB面を知った後だと仕掛けが盛り沢山で再読も楽しい作品だと思います。