世界はそれを百合と呼ぶんだぜ
以前からインターネット上でざわざわと話題になっていた(わたしの界隈だけ?)阿佐ヶ谷姉妹のエッセイ集を読んだ。
本当にお互いのことばかり書いていて、回を重ねるごとに、阿佐ヶ谷でのほほんと暮らす阿佐ヶ谷姉妹の生活の様子や日々の楽しみ、動向が明らかになっていく構成になっている。ふたりの日常にはとくにこれといって大きな事件も起こるでもなく、のほほんとしていて、だけど不思議と温かくて面白い。何よりお二方とも含蓄のある優しい文章を書かれるのがえも言われないおかしみがある。何かに憤っていても不思議とふんわりしているのがなんとも愛おしいのだ。
今回初めて知ったのは、阿佐ヶ谷姉妹はあんなに見た目がそっくりなのに中身は正反対だということ。「のほほん」というオノマトペにぴったりな性格でのほほんとしすぎて時々ウジウジしてしまうエリコさんと、意外とのほほんからは遠くマイペースでチャキチャキしているミホさん。それでも上手いこと噛み合って生活しているのはなんとなく納得させられてしまう。
初めて書かれたという書き下ろしの小説もミホさんは力強く、エリコさんはなよなよとした雰囲気で、個性が強く出ているのが印象的だった。そしてふたりとも切り口と文章がうますぎる。
さて、この『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』を読んでいる間に思い出した言葉があった。
「ブロマンス(bromance)」というのはウィキペディアによれば、
2人もしくはそれ以上の人数の男性同士の近しい関係のこと。性的な関わりはなく、ホモソーシャルな親密さの一種である。
と紹介されており、いわゆるバディ物の映画だったり、「付き合ってるわけじゃないけど妙に仲の良いふたりないしはそれ以上」という意味を持った言葉としてわたしは解釈している。
まさに阿佐ヶ谷姉妹の関係性はこのブロマンスど直球だとわたしは思う。実際の姉妹ではないのに、姉妹のように寄り添って暮らし、日々の喜びを分かち合い、時に喧嘩もし。おばちゃん同士がわちゃわちゃしている関係、ともすれば「バロマンス」と名付けてしまってもいいのでは……?(これが言いたかっただけ!)
そういうものとか全部含めて女性同士の人間関係を百合と呼び習わしている身としては、こう叫びたい気持ちでいっぱいである。
「世界はそれを百合と呼ぶんだぜ!!」と。