ももんじ通信

ライフログ的なにか

ミステリ界の騙し絵というのは言い得て妙(『弁護側の証人』感想)

 

弁護側の証人 (集英社文庫)

弁護側の証人 (集英社文庫)

 

 

ヌードダンサーのミミイ・ローイこと漣子は八島財閥の御曹司・杉彦と恋に落ち、玉の輿に乗った。しかし幸福な新婚生活は長くは続かなかった。義父である当主・龍之助が何者かに殺害されたのだ。真犯人は誰なのか?弁護側が召喚した証人をめぐって、生死を賭けた法廷での闘いが始まる。「弁護側の証人」とは果たして何者なのか?日本ミステリー史に燦然と輝く、伝説の名作がいま甦る。

あらかじめ本文にトリックが仕掛けられていることを知っていたら意外と見抜くのは簡単だったかも。今回私はガチガチに意識して読んでしまったけど、何気なく読んでいたら読み飛ばしてしまうような些細な部分が鍵に。

犯人と被告は影絵の影と本体のように対になっていて、漣子の目を通して描かれる出来事の時間の違いや読み取れる気持ちのズレがこの上なく慎重で見事でした。

一方で、トリックはかなりシンプルなため、作品自体かなり短いものであるのに冗長に感じてしまった部分もありました。漣子視点から描かれているのでそれがあまり合わなかったのかも。特にヒロインの美しさに寄ってたかって男がメロメロになっちゃう描写は……時代なのかな……食傷気味に。蛇足にも感じました。

この作品、キムタクとニノで映画になってたやつじゃない!!?と思って読み始めたけど、違うんですね。最近映画になってたのは『検察側の罪人』という作品のようです。こんだけ似てるタイトルをなぜ……と思っていたら、クリスティの作品に『検察側の証人』というのがあるらしく、それぞれそれのオマージュなんですね。ひとつ賢くなりました。