橘あきらと共に歩む、2時間の青春。
少女漫画は、ヒロインが可愛いことが売れるための最大条件で、その可愛さというのは単なる顔の話ではなくて、性格や行動の方がむしろ重視されるところがある。
それは少女漫画を読む「少女」たちが移入するその漫画にログインするためのアカウントがヒロインであり、その世界を楽しむためのツールとなりうる存在であるためである。だから超絶美少女で完璧超人な部分がはじめから剥き出しになっているヒロインというのはあまりいないのだと思う。
余談であるけれども、一方で少年漫画における主人公は羨望の対象となるような部分を持たされる場合が多いと感じる。少年漫画世界には特定のアカウントを介してログインするのではなく、その空気の中に漂うような第三者視点に立つ構造が確立されているのだろう。
なぜこんな話を始めたのかというと、私は漫画『恋は雨上がりのように』に登場するヒロイン、橘あきらは近年読んだ少女漫画の中でベストに可愛いと確信しているためである。
その他に、これまでめちゃくちゃ熱を上げてしまった少女漫画のヒロインといえば……
『ハンサムな彼女』の萩原未央ちゃん。
『近キョリ恋愛』の枢木ゆにちゃん。
とまあ、クール系のヒロインが私の好みだと分かったところで……。
2018年は『恋は雨上がりのように』の映像化ラッシュの年で、アニメと映画が制作された。そのアニメがまあ〜〜原作にかなり忠実で、特にOP曲の「ノスタルジックレインフォール」の歌詞が『恋雨』のための歌詞でしかなくて嬉しくなってしまった。
放課後 下駄箱 響く雨音
傘無く駆け出すシャツが濡れる
大人のあなたに届かなくて
容易く触れてる雨に…雨になりたい
というイントロのフレーズがすごく端的に作品自体を表現していて本当に最高だと思う次第……。
本当は映画版も映画館で見ようと思っていたのですがぼーっとしているうちに公開が終わってしまい、今回Amazonプライムに見放題で入っていたのでようやく観ました。
観た感想は「店長が良識ある大人でよかった……!」というのがいちばん。あきらちゃんみたいに可愛い女の子が思春期の突っ走りでグイグイアタックしまくった場合、相手が女子高生だときちんと弁えられなかった残念なおじさんがわいてしまうのは必至……!そこをきちんと諭してくれて、良識の範囲内で突っ走るあきらに付き合う店長の距離感良かったなー。
あきらとの交流の中で剥き出しの「若さ」に触れ、店長のなかにも「若さ」が生まれるという文脈も個人的な原作の解釈と完全に一致していてとても良かった。
大泉洋は店長にしては少しかっこ良すぎるかな?と思っていたけど、まさにハマり役。ちひろ役の戸次さんも良かった。日本には素晴らしいおじさん俳優がいっぱいいて幸せ。
で、この映画でいちばん私が感じたのはこれまで述べてきた諸々とはほぼ関係なくて、ただただ小松菜奈が可愛かったというそれだけなんだけど。この映画の最大の功績は、小松菜奈がめっちゃくちゃ可愛く撮れているという点にあると確信。高校生を演じることができる希少な期間に、一途に恋する女の子を小松菜奈が全力で演じ、それを切り取るということに成功しているという点でこの映画は成功していると言えるだろう。ありがとう!!!!
オープニングで制服の小松菜奈を全力疾走させるところはすごくカッコよく仕上がっているし、部屋着、ファミレス制服、部活のユニフォームなどこの映画を通して我々は擬似的に小松菜奈演ずるあきらちゃんと2時間の青春を共にできるのです。あるいは、冒頭に述べたように小松菜奈というアカウントを通して恋雨の世界にログインすることができる。本当に素晴らしいことだと思います。