ももんじ通信

ライフログ的なにか

真打昇進披露のススメ

披露目興行が好きだ。

二つ目昇進披露、襲名披露、真打昇進披露……。

たいてい、毎年春と秋に各協会から数名ずつ新真打がうまれる。各寄席で披露目の興行を10日ずつ行うのが常で、それぞれが寄席とは別に自身の会として披露目として会を行う。

寄席に出ない立川流圓楽一門会の新真打は、披露目と名の付く会は一回きりで、ほかに運が良ければ披露と名の付く会があったり、披露目と別に口上があったりする。

真打昇進披露の会場は、出演者も客間スタッフも、みんなが緊張している。その日の興行の面白さは関係ない。主役が決まっているため、トリ前に出る出演者は客席に爪痕を残す必要は全くなく、つつがなくバトンを後の出番につなげるのが唯一にして最大の役目である。

客席も緊張している。「見にくる」のではなく「見守る」のがその日の使命であり、間違えても携帯を鳴らすなどの失態を犯すことはあってはならず、細心の注意をはらって席に着く。笑いすぎても、笑わなすぎてもいけない。中庸に果たしてなれているのか?と自問しながら、進んでいく演目を見守る。

真打昇進披露の出演者はいつも、めちゃくちゃ豪華だ。それを目当てに足を運ぶ人もいるかもしれないが、間違ってもトリ前に「待ってました」などと声をかけてはいけない。ましてや、目当てが終わったからと中入りで帰ることなどあってはいけない。絶対にあってはいけない。

わたしは披露目の会が大好きだ。みんながみな、一人の演者さんを祝うためだけに集まっているので、会場は緊張に包まれているにも関わらず、その空気は温かくにこやかだ。

その空気を吸いたくて、年に数回昇進披露に足を運ぶ。口上の、割れんばかりの拍手、手締めの音、トリの新真打が登場する瞬間の雨のような掛け声……それらを一切合切浴びると、自分も頑張ろうという気持ちがふつふつと湧いてくる。