ももんじ通信

ライフログ的なにか

春風亭一之輔という男・『いちのすけのまくら』『春風亭一之輔の、いちのいちのいち』を読んで

春風亭一之輔師匠といえば、同世代の噺家さんの中では頭一つ飛び抜けた売れっ子で、落語好きなら必ず一度は聴いたことのある落語家である。

先日、落語会の開演待ちの客席で「一之輔の良さがわからん!」と豪語するおじさんを見たけれど、そんなおじさんさえ良さが分からずとも定期的に「確認」に行ってしまう落語家の地位をものにしているのが一之輔師匠なのだ。

昨年、NHKのプロフェッショナルに出演された際には年間につとめる高座が900席を超えると伝えられていた。

顔は市川海老蔵に似ていると思う。一之輔師匠の顔を思い出そうとすると、海老蔵の顔しか出てこなくてGoogleで検索しなくてはいけないほどだ。

もしくは、以前にインターネットで見た、蜂に刺されてしまい、ほっぺたが腫れてしまった犬に似ていると思う。これは、高座でするぷくっと頰を膨らませる顔が。

一之輔師匠はいつも不機嫌なイメージだ。不機嫌というよりは、むっつりしている。いつも眉間に皺が寄っているのだ。だから、不機嫌なキャラクターがとても似合う。ご機嫌な姿よりも、怒ったり悩んだり、苦しんでいる姿が本当によく似合う。

優しい人だと勝手に思う。少なくとも人が嫌がることは、しない人だと思う。そういうまっすぐさを、高座でなんとなく感じる。

そんな一之輔師匠の日常や考えている事を垣間見る事ができるのが『いちのすけのまくら』だ。ポチポチとガラケーに打ち込まれた文章は高座の師匠の口調を思い出させてくれる。

 

いちのすけのまくら

いちのすけのまくら

 

 

『いちのすけのまくら』は長い間かけて書かれた師匠のコラムが掲載されているが、『春風亭一之輔の、いちのいちのいち』はまた趣が異なる。写真家のキッチンミノル氏が、2016年の1年間「ついたち」の一之輔師匠に密着して逐一行動を記録し、写真を撮った写真集だ。「総天然色」など嬉しい響きの言葉にも会えて、ドキドキしながら夢中で読んだ。

当代一忙しいと言われてる落語家は、やはり忙しいのだ。と当たり前のことを思った。1日のうちに途方も無い人数の人たちと接していて、やっぱりどこか不機嫌そうだ。そんな中、ところどころニカッと笑ってらっしゃる写真にはときめきが隠せない。

 

春風亭一之輔の、いちのいちのいち

春風亭一之輔の、いちのいちのいち

 

 二冊は同時期に題材を取っている部分もおおくあり、併せて読むことでより一之輔師匠を楽しむことができる。楽屋の話、師匠の、弟子の、子どもの話。写真と文章が絡み合って初めて、立ち上がってくるイメージがある。やっぱりどこか不機嫌ながら、一之輔師匠の視線はとてもニュートラルで、だからこそ私は一之輔師匠のことが大好きなのだ。

 

芝浜とシバハマ

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