ももんじ通信

ライフログ的なにか

SNS時代の性教育(『ツキイチ!生理ちゃん』は面白いよという話)

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生理ちゃん

生理ちゃん

 

 

  SNSが普及して、インターネットが普及する以前には共有されることの難しかった悩みや気持ちが簡単に見られるようになった。

例えば子育てについての楽しさやしんどさは、これまで顔を付き合わせた知り合い同士の会話の中ででしか摂取することができないものだと思っていたが、 SNSがあれば匿名で簡単に共有できるものとなり、受取手も簡単に共感できるようになった。

この傾向の中で、それぞれの生きづらさについても触れられることが多くなり、女性であるがゆえに被ったセクシャルハラスメントを告発するmetoo運動や、それに派生した公的場における服装や装飾品のジェンダーの無言の強制に抗議するkutooなどの言葉も見られるようになった。

特殊な障害や気質の傾向を周知するための動きも毎日のように見られ、転職や労働問題、日々感じた疑問などこれまで抱え込まれていたモヤモヤが爆発しているのが現状だと私は感じている。

そんなモヤモヤの共有のなかで、「モヤモヤしていない側」の意見を見ることもあるのだが、かなり衝撃的だったのは成人している男性の一部(大部分ではなく一部と信じたい)に生理を発情期のようなものととらえ、生理用品を嗜好品だと思っている人がいたということ。確かに、しっかりと習うわけではないことにしても………と私は驚きが隠せなかった。

思えば、教わっていないのに出来なきゃいけないスキルというのは多すぎるのではないか。圧倒的に性教育は足りていないし、さまざまな権利に関する知識が乏しいために「やりがい搾取」で潰れる人もいるし、税務や社会保障・確定申告のやり方なんかは知らないが為に苦しむ人もいる。

そんな暗黙のうちに「みんな知ってるでしょ」となってしまう事項の不満を急にぶつけられると、こういう形で的外れな知識が露呈するのだという良い例がこの「嗜好品」の例だろう。

私が創作の中での生理に初めて出会ったのはやぶうち優の『水色時代』だった。

 

思春期の主人公をなぞる内容は、読んだ時にまだ小学生だった自分にとってはかなり生々しく、新鮮で衝撃的だったのを覚えている。やぶうち優はその後ジェンダー色の強い漫画を描いていく傾向にあったかな。

他には、斎藤綾子だったり、

 

愛より速く (新潮文庫)

愛より速く (新潮文庫)

 

村田沙耶香だったり。

殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産 (講談社文庫)

 

かなり、性やジェンダーがクローズアップされた作品の中で取り上げられるのがこの「生理」という状態だという印象。

そんな中で、(もろにタイトル・テーマ共に生理なのはともかく)カジュアルに消費される形での作品というのはかなり画期的なのではと感じた。

帰省の電車の中で何となく読み始めたのだけど、話数を重ねているだけあって読み応えもあり、オムニバスなのでダレずに読めるのが良かった。特に日本での生理用品の社会史を扱った回は初めて知ることばかりで勉強になった。

今度、映画になるらしくてそれも気になっているが………。

といっても、主な読者層は女性とサブカル界隈の一部の男性なんだと思う。圧倒的に女性の共感がメインの作風であるし、「生理」をタイトルに冠している漫画はおそらく忌避されてしまうと思う。

これから予想されることは、映画の公開が決まって広告が打たれるタイミングで、それまで作品を知らなかったいろんな層からの「こんな下品なものを映像にして!」というバッシングが起こるということだ。

そのバッシングにどう応えるかの部分も、ひとつの作品の完成に迫る手段だと私は思う。

とりあえず、面白いので読んでみてほしいです。