ももんじ通信

ライフログ的なにか

演劇の席の等級を考えるはなし

5月はたくさん演劇を観に行く用事がある。演劇は席によって等級が分けられていることが多く、私は良い席(すなわち前!前!かぶりつき!)が良いので、これまで迷わずにS席を選ぶ生活を送ってきた。しかし、ふとその生活に終止符を打とうかという気持ちがチケットを取っている最中に頭をもたげた。

人気のある公演(なくても…)は、プレイガイドで先行抽選が行われる。余程切羽詰まっていない限り、この抽選という制度は使わない方が良い。

なぜなら、べらぼうに高い手数料(公演によっては1000円近くかそれ以上)取られる上に、大して良い席は用意されないためだ。

以前に全席共通の価格の演劇のチケットを購入した際、最速抽選で購入したにもかかわらず、3階席がご用意されたことがある。しかも、そのチケットは一般発売で売り切れることもなく………。

こういうことがあるから、演劇の抽選販売は余程人気の公演でない限りは手を出さないのが吉である。「前方の席を保証するものではありません」と注意書きにある通り、一般発売で取るよりも圧倒的に良くない席が必ず用意されている。

唯一の例外は、落語の先行抽選であり、これまで応募した先行抽選のほとんどで最前列がご用意されていた。そうでなくともかなり良い席が手に入ることが多い。

チケットを購入する上での最善手は一般発売である。座席を選択することができるが、一般発売が始まってすぐに購入する場合には、座席選択をオフにして勝手に席を選択する形式で購入すると、前方の中央が取れやすい。

次にいいのが当日券である。落語は予約購入で割引という制度があるが、演劇にはない。むしろ、当日購入することでプレイガイドの手数料を払わなくていい上に、当日残っている席の中で前方のものから購入できるため、ヘタに一般発売に臨むよりも結果が期待できる。

さて、本題は席の等級の話である。

普段は大抵の公演を先行ないしは一般発売で一番高い等級の席を選んできた私なのだが、大抵は後方席で苦い思いをしてきた。明らかに最前列と1階後方列は同じ値段で通用するものではないと常々思ってきた。

その思いがはち切れたのが、先日「シラノ・ド・ベルジュラック」の公演を取ろうとサイトを見たときである。

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S席12000円、A席7000円、B席4000円

わたしは驚愕した。S席はなんとB席の3倍もの値段をもって観客を楽しめようとしているのだ。それはもう、楽しいに違いない。しかし、しかしだ。

同じ値段を払いながらもいいS席とちょっと惜しいS席が存在するのも確かである。S席とはすなわち、1階ヒラ席である。前のお客さんが大柄で頭の大きな人だったらどうだろう。知らん他人の後頭部を見るのに、料金の半分くらいを持っていかれるのは目に見えている。もちろん、もちろん演劇がそれだけのものではないことは重々承知だが、幾度となくそれで辛酸を舐めてきた身としてはこの、本編と関係なく割りを食う気持ちになることが本当に耐えられないことなのも事実だ。これは知らんおっさんの後頭部を見続けるのに5000円+手数料を払ったことがあるからこそ、アップにした髪の束の間を縫って演劇を見ることに13000円+手数料払ったことがあるからこそ言えることなのだ。

逆に……とこの料金表を見たときにわたしは思った。

あらかじめ席が悪いことが分かっていながら観劇に行ければ、この割りを食う気持ちは薄まるのではないだろうか。

一流の演劇をグッと抑えた値段で見られるだけ、いいのではないか?

幸い、演劇鑑賞を趣味にしているだけあって、オペラグラスは当然持っている。

オペラグラス前提で臨む演劇公演ならそれなりにお値段分楽しむことができるのではないか。

そう思い、先日前哨戦として池袋東京芸術劇場プレイハウスで上演中の「酒と泪とジキルとハイド」を若干舞台が見切れるサイドシートという等級の低い席で見てきた。正直、プレイハウスは大きな劇場ではないため大体どこの席も満足度は変わらないから普通の席でも良かったが………。舞台向かって左手の2階席、多少舞台の下手が見切れるものの、ほとんどは問題なく見ることができた。むしろ1階席後方よりも役者さんたちとの距離は近いため、表情などが分かったのは良かった。

何より通常の席より2000円安いので、その分他の落語会に行ったり昼食を少し奮発したりできる。

演劇の低等級席、まだまだ研究のしがいがありそうだ。